マーティン・M・クリスティーヌさんのこと 前上野動物園園長 中川志郎 栴檀は双葉より芳し、という言葉がある。 今回、クリスティーヌさんがこんな立派な本を書いたことを知って、あらためてその感を深くした。 彼女がお父さんに連れられて動物病院(上野動物園内)に来たのは小学校四、五年のころ。 そのうちに、動物好きのお父さんそっちのけで、動物病院に入りびたるようになる。しかも、入院患者の動物たちとたちまち仲よくなってしまう。 大きくなったら獣医さんになる!というのが口ぐせだったけれど、とうとう本物になってしまい 、実にユニークな本を書いた。 “競走馬の心の側に立って競馬をとらえたい”なんて、いかにも彼女らしい。 競馬は、人間の楽しみのためにあるのだけれど、ウマの側に立った本というのがひとつくらいあってもいい。私が彼女と彼女の書いたこの本に期待するのはそのゆえである。 マーティン・M・クリスティーヌ 1951年、東京に生まれる。 15歳のときカネボウ化粧品のキャンペーンガールに選ばれ、モデルとしてデビュー。雑誌などで活躍のかたわら、麻布獣医科大学に学び、獣医となる。テキサス州立A&M(農工大)修士課程終了。現在、競馬界で初の女性公認獣医師として活躍中。(本発売当時のもの)